源泉徴収がある請求書の仕訳例|計算方法・預り金・納付までケース別に解説
Ledgerly編集部公開日 更新日
源泉徴収がある請求書の仕訳例——計算方法から預り金・納付までケース別に解説
デザイナーやライター、税理士など、個人に報酬を支払うときは、請求書の金額をそのまま振り込んではいけないケースがあります。報酬から所得税を差し引いて(源泉徴収して)支払い、差し引いた税額は会社が預かって、後日まとめて国に納めるためです。
源泉徴収が絡む請求書は、「請求額」「支払額」「預り金」の3つの金額が出てくるため、通常の仕訳よりも間違いが起きやすくなります。この記事では、源泉徴収が必要になる条件と税額の計算方法を整理したうえで、よくある取引ごとの仕訳例を具体的な金額で紹介します。
この記事は、報酬を支払う側(法人・個人事業主)の経理処理を対象にしています。内容は2026年10月時点の制度に基づきます。個別の判断に迷う場合は、国税庁の「源泉徴収のあらまし」や税理士にご確認ください。
源泉徴収が必要になる3つの条件
源泉徴収が必要かどうかは、次の3つの条件がそろうかどうかで決まります。
1. 支払う側が「源泉徴収義務者」であること
法人は、規模にかかわらず源泉徴収義務者です。個人事業主の場合は、従業員に給与を支払っていれば源泉徴収義務者になります。従業員を雇っていない個人事業主(家事使用人のみを雇っている場合を含む)は源泉徴収義務者ではないため、報酬を支払っても源泉徴収は不要です。
2. 支払先が個人であること
源泉徴収の対象になるのは、個人(個人事業主・フリーランス)への支払いです。株式会社や合同会社など法人への支払いは、原則として源泉徴収の対象になりません。
3. 所得税法で定められた種類の報酬であること
個人への支払いであれば何でも対象になるわけではありません。法律で定められた種類の報酬・料金だけが対象です。
| 対象になる主な報酬 | 対象にならない主な支払い |
|---|---|
| 原稿料・執筆料、デザイン料、イラスト料 | プログラミング・システム開発の委託料 |
| 講演料、翻訳料・通訳料、写真の撮影料 | 物品の販売代金 |
| 弁護士・税理士・社会保険労務士などへの報酬 | 法人への支払い全般 |
| 司法書士・土地家屋調査士への報酬 | 運送・清掃など、対象の報酬に当たらない業務委託 |
特に間違えやすいのが、Web制作やIT関連の委託です。デザインにあたる部分は源泉徴収の対象ですが、プログラミングやシステム開発そのものは対象になりません。1つの請求書にデザインと開発が混在している場合は、内訳を確認しましょう。
源泉徴収税額の計算方法
基本の税率:10.21%と20.42%
源泉徴収税額は、1回に支払う金額に応じて次のように計算します。
| 1回の支払金額 | 源泉徴収税額 |
|---|---|
| 100万円以下 | 支払金額 × 10.21% |
| 100万円超 | (支払金額 − 100万円)× 20.42% + 102,100円 |
10.21%は、所得税10%に復興特別所得税(所得税額の2.1%)を加えた税率です。計算した税額に1円未満の端数があるときは切り捨てます。
消費税は含めるのか
請求書で報酬の額と消費税の額が明確に区分されている場合は、消費税を除いた金額を基準に源泉徴収税額を計算できます。区分されていない場合は、消費税を含めた金額が基準になります。
計算例
| 報酬(税抜) | 計算式 | 源泉徴収税額 |
|---|---|---|
| 50,000円 | 50,000 × 10.21% | 5,105円 |
| 100,000円 | 100,000 × 10.21% | 10,210円 |
| 300,000円 | 300,000 × 10.21% | 30,630円 |
| 1,500,000円 | (1,500,000 − 1,000,000)× 20.42% + 102,100 | 204,200円 |
司法書士・土地家屋調査士への報酬は計算方法が違う
司法書士・土地家屋調査士・海事代理士への報酬は、1回の支払金額から1万円を差し引いた残りに10.21%を掛けて計算します。また、登録免許税などの立替実費が請求書で明確に区分されている場合、その部分は源泉徴収の対象になりません。
仕訳例①:デザイン料(税込経理)
まずは最も基本的なケースです。
- 取引:個人のデザイナーにロゴ制作を依頼
- 請求書:デザイン料100,000円+消費税10,000円=110,000円(登録番号あり)
- 源泉徴収税額:100,000円 × 10.21% = 10,210円
- 実際の振込額:110,000円 − 10,210円 = 99,790円
請求書を受け取ったとき(計上時)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 外注費 | 110,000 | 未払金 | 99,790 |
| 預り金(源泉所得税) | 10,210 |
報酬を振り込んだとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払金 | 99,790 | 普通預金 | 99,790 |
源泉所得税を納付したとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金(源泉所得税) | 10,210 | 普通預金 | 10,210 |
ポイントは、計上時に未払金を「振込額」で立て、差額を預り金にすることです。未払金を請求額の110,000円で立ててしまうと、振込後に10,210円の未払金が残り続けることになります。
仕訳例②:同じ取引を税抜経理で記帳する場合
税抜経理を採用している場合は、消費税を仮払消費税として分けて記帳します。源泉徴収の部分は変わりません。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 外注費 | 100,000 | 未払金 | 99,790 |
| 仮払消費税 | 10,000 | 預り金(源泉所得税) | 10,210 |
仕訳例③:税理士の顧問料(その場で振込)
- 請求書:顧問料30,000円+消費税3,000円=33,000円
- 源泉徴収税額:30,000円 × 10.21% = 3,063円
- 振込額:33,000円 − 3,063円 = 29,937円
計上と同時に振り込む場合は、未払金を使わずに1本の仕訳にまとめられます(税込経理)。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払報酬 | 33,000 | 普通預金 | 29,937 |
| 預り金(源泉所得税) | 3,063 |
税理士・弁護士などへの報酬は「支払報酬」や「支払手数料」で処理するのが一般的です。会社で使っている勘定科目に合わせてください。
仕訳例④:100万円を超える講演料
- 請求書:講演料1,500,000円+消費税150,000円=1,650,000円
- 源泉徴収税額:(1,500,000 − 1,000,000)× 20.42% + 102,100 = 204,200円
- 振込額:1,650,000円 − 204,200円 = 1,445,800円
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払報酬 | 1,650,000 | 未払金 | 1,445,800 |
| 預り金(源泉所得税) | 204,200 |
100万円を超える部分だけが20.42%になる点に注意してください。1,500,000円全体に20.42%を掛けると、306,300円と大きく過大になります。
仕訳例⑤:司法書士への報酬
- 請求書:報酬50,000円+消費税5,000円=55,000円
- 源泉徴収税額:(50,000 − 10,000)× 10.21% = 4,084円
- 振込額:55,000円 − 4,084円 = 50,916円
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払報酬 | 55,000 | 普通預金 | 50,916 |
| 預り金(源泉所得税) | 4,084 |
源泉徴収でよくある3つのミス
ミス1:「外注費だから必要」「個人だから必要」と思い込む
源泉徴収は「支払う側が源泉徴収義務者か」「支払先が個人か」「対象の報酬か」の3つで決まります。外注費でもプログラミングの委託は対象外ですし、従業員のいない個人事業主が支払う場合はそもそも不要です。どれか1つでも思い込みで判断すると、徴収漏れや取りすぎにつながります。
ミス2:差額を雑費や支払手数料で処理してしまう
請求額と振込額の差額を「よく分からないから」と雑費などで処理してしまうと、預り金として納付すべき税額が帳簿から消えてしまいます。差額は必ず預り金(源泉所得税)として計上し、納付したときに消し込みます。
ミス3:納付期限と支払調書を管理していない
源泉徴収した税額は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。給与の支払人員が常時10人未満の事業者は、届出により半年分をまとめて納付できる「納期の特例」がありますが、対象は給与と、弁護士・税理士・司法書士などの士業への報酬に限られます。デザイン料や原稿料は納期の特例の対象外なので、翌月10日までに納付が必要です。
また、同じ相手に1年間に支払った報酬が一定額(デザイン料・原稿料や士業への報酬などは5万円)を超える場合は、翌年1月31日までに「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を税務署に提出します。預り金の補助科目を支払先ごとに分けておくと、年末の集計が楽になります。
支払先がインボイス未登録の個人の場合
フリーランスの中には、インボイス(適格請求書発行事業者)の登録をしていない方もいます。この場合、源泉徴収の考え方は変わりませんが、仮払消費税として控除できる額が変わります。2026年10月1日以降の取引では、消費税相当額の70%だけを控除し、残りは費用に含めます。具体的な計算と仕訳は「経過措置70%の計算方法と仕訳例」で解説しています。取引先の登録番号は「インボイス登録番号チェック(無料)」でまとめて確認できます。
源泉徴収の処理を楽にするには
源泉徴収のミスを減らすには、判断を毎回ゼロからしないことが大切です。
- 取引先ごとに「源泉徴収の対象かどうか」を決めておく:取引先マスタや一覧表に記録しておけば、請求書が届くたびに迷わずに済みます。
- 振込額ベースで未払金を立てる:計上時点で預り金を分けておけば、振込や消し込みで差額が出ません。
- 預り金の残高を毎月確認する:翌月10日の納付前に、預り金の残高と当月の源泉徴収税額の合計が一致しているかを確認します。
Ledgerlyでは、請求書に記載された源泉徴収税額を読み取り、預り金(源泉所得税)を分けた仕訳を自動で作成します。支払先が個人で源泉徴収が必要と思われるのに請求書に記載がない場合は、10.21%・20.42%で計算した目安の税額とともに確認フラグを表示します。作成した仕訳は、freee会計・マネーフォワード クラウド会計・弥生会計に取り込めるCSVで出力できます。月200件までは無料でお使いいただけます(料金プラン)。
まとめ
- 源泉徴収は「支払う側が源泉徴収義務者」「支払先が個人」「対象の報酬」の3条件で判断します。
- 税率は100万円以下の部分が10.21%、超える部分が20.42%。消費税が区分されていれば税抜金額で計算できます。
- 計上時に未払金を振込額で立て、差額を預り金(源泉所得税)にするのが基本の仕訳です。
- 納付は原則翌月10日まで。デザイン料・原稿料は納期の特例の対象外です。
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